この場面でイエスは、百人隊長の態度に対し「これほどの信仰を見たことがない(9節)」と語られた。このように言わしめたその信仰とは何か。聖書の舞台であるパレスチナ一帯は当時、ローマの支配下に置かれていた。そしてこの場面の舞台カファルナウムにはローマの駐留軍がいた。百人隊長とは、このローマ軍人であり、ユダヤ人から見て異邦人である。支配者は時に、権威をかざして横暴に振る舞うが、この百人隊
長は、ユダヤ長老の証言(5節)にあるように、ユダヤ教の会堂を建てている。現代風に言えば、この百人隊長は求道者として、ユダヤ教に仕えていたのだろう。そして神を知り、求めていたからこそ、彼にはイエスの力を認める事が出来た。だからイエスに求めたのだ。しかも当時の宗教的観点をしっかりとわきまえ、「イ
エス様をお迎えしてけがれさせるわけには行かない」と、「ただ、お言葉をください(7節・口語訳)」とだけ求めた。彼はイエスの言葉の力を認め、信じた。だからイエスからその信仰を褒められた。「御言葉の権威」を無条件に認め、その言葉による力を信じ、絶対的に信頼を寄せる百人隊長の姿に、私たちも学びつつ、日々「御言葉をください」と求めつつ歩む者でありたい。難波信義牧師