パウロがヨーロッパの地に渡って最初に伝道した土地、それがフィリピであり、この手紙を通して、その親しい交わりが感じられる。しかもパウロがこれを書いた時、彼は既に投獄されていて、死の危険さえあった。その中でも彼は、信仰の喜びや教会の交わりの大切さを、この手紙の中に盛り込んでいる。
特に示された箇所は、フィリピの教会が今まさに分裂の危機にあり、それを引き起こしていたエボディアとシンティケという女性指導者が名指しされている。
パウロは彼女たちを名指しすることで、彼女たちを共同体から追い出そうとしているのではない。彼はこの4章に至るまでで繰り返し「心を合わせる」「思いを一つに」と記してきた。わざわざ名指ししたのは、フィリピの教会の一人一人が、この問題から目をそらさず、一丸となって乗り越えなさい、という励ましなのだ。
しかも単なる励ましではなく、その言葉の前提として「主において」等の言葉に示されるように、信仰的なクッションをおいて、冷静に判断しなさいと言うのだ。全ての事柄や問題を「主を中心にする」「主と共にある」事を覚えながら、全体で共有し、判断しなさいと言うのだ。
「主において」という信仰的クッションを自覚しつつ、教会のこと・社会のことを見つめ、平和をつくって行きたい。 難波信義牧師