「イエスは、天に上げられる時期が近づくと、エルサレムに向かう決意を固められた。(51節)」と始まるこの場面は、19章27節まで続く「イエスがエルサレムを目指して進まれる旅」となっている。
テーマは「旅」だが、それは地上の旅路を歩む私たちの人生とも重なる。
固めるほどの決意をもったイエスの旅路であったが、その決意をくじくような出来事が起こる。サマリア人に拒否されたのだ。ユダヤ人とサマリア人は複雑な歴史経過の中で犬猿の仲となっていた。
ユダヤ人にとっての中心であるエルサレムを目指すイエス一行であったため、サマリア人から拒否されたのだった。
ヤコブとヨハネは怒りにまかせて「滅び」を宣告しようとするが、イエスはそれを戒められた。イエスは弟子たちの乱暴な復讐心を戒めただけではなく、苦難の待つエルサレムへ向かうイエスの決意を理解せず、滅ぼすことによって事を解決しようとする、その思いを叱ったのだ。
ここにイエスの旅のテーマが示される。「滅ぼすためではなく、救うためにイエスはこの世に来られた」と言う事である。
今を生きる私たちは、様々なことに心が騒ぎ、悩まされ、あるいは怒る。しかし、滅びではなく救いを求めるイエスが共にいてくださる恵みを覚え、イエスの戒めをしっかりと聞きつつ歩みたい。
難波信義牧師